切羽へ
2008 / 09 / 07 ( Sun )
第139回直木賞受賞作。 候補作になる前に、新聞の書評で読んでいたので、気になっていた。 以前、候補作になった『ベーコン』が気に入ったから。 長崎県の炭鉱の島・崎戸を舞台にした恋愛小説。 小さな島で、画家の夫と暮らす小学校養護教諭のセイ。夫婦仲はよいが、東京からやってきた若い男性教師・石和に、セイはひかれていく。 恋愛小説といっても、セイ自身に劇的なことは起きない。 セイの周りで小さな事件はあっても。 だからこそ、リアルさを感じる。 セイの心の動きは、身近な人にわかってしまうが、それでも、何事もなかったように、暮らしていく。 これが、夫婦というものなのだろうか。 セイが石和を好きになる気持ちがわかるようなわからないような。 小さな島で暮らす閉塞感は、耐え難いものだと想像するが、淡々と描かれているので、思いのほか明るく感じる。 タイトルの「切羽」はトンネルの一番先の意味。トンネルがつながるとなくなってしまう。 余談だが、「高円寺の古本屋と居酒屋をあわせたような店」という記述があって、コクテイルを思い出した。 |
荒野
2008 / 08 / 29 ( Fri )
直木賞受賞後第一作。 といっても、第一部、第二部は、ファミ通文庫で出ていた「荒野の恋」に加筆修正したもので、書下ろしは第三部のみ。 荒野というのは、ヒロインの名前。 装丁も、中身も、みずみずしい。 かつて少女だった人にとっては、切なさや懐かしさとともに、いとおしく読めると思う。 桜庭一樹は、少女を書かせたら最高だ。 特異な環境にあっても、少女は、少女なのだ。 クラスメートとの日常的なやりとりを読んで、自分の中学時代を思い出した。 第一部と第二部をリアルタイムで読んだ人は、第三部の書下ろしを心待ちにしていたのかもしれないが、私は、第三部が、もっともつまらなかったので、ちょっと残念。 |
仏果を得ず
2008 / 07 / 27 ( Sun )
表紙は、勝田文。かわいらしいので、ジャケ買いをした人もいるかもしれないけど、私は、エッセイ以外は、少女マンガ風じゃないほうが好み。 文楽修行中の主人公・健が悩みつつ、葛藤しつつ、成長していく物語。 師匠から言われて健がコンビを組むことになる三味線の兎一郎のクセものぶり、謎めいた様子が、興味を誘う。 師匠も、個性的で豪快である。芸能の世界には、本当にこういう人たちがいそうな気がする。 文楽の素養が全くなくても、問題ない。 何となく知っている『女殺油地獄』『妹背山婦女庭訓』『心中天の網島』といった名作がわかりやすく紹介されているので、楽しい。 三浦しをんは、天才だと思う。 どんな題材でも、しをん風味で、面白くできるのだから。 何となく、戸板康二の描く歌舞伎の世界を思い出した。 |
文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編
2008 / 07 / 18 ( Fri )
さすがに、立て続けに読むと、食傷気味である。 冒頭のトークショーは、長嶋有氏と石田衣良氏がゲスト。 長嶋氏って、男だったんですねー。恥ずかしながら知りませんでした。 どちらもトークショーのゲストとしては、盛り上げてくれる感じで、石田氏なんて、日頃のイメージよりずっとよかった。渡辺淳一センセーとのエピソードなんかも披露しちゃって笑わせてくれるし。 トークショー以外は、少しテンション下がり気味で、読む側も、メッタ斬りに慣れてきてしまったのかもしれない。一番印象に残ったのが、桜庭一樹さんの授賞式の話だったり、銀座の文壇バーの話だったり。 巻末の各賞採点リストを見て気づいたんだけど、500万とか1000万とかもらえる賞があるのねー。 思わず、そこにばかり目がいってしまった。 |
文学賞メッタ斬り! 2007年版 受賞作はありません編
2008 / 07 / 15 ( Tue )
前作で、初めて知った作家が中原昌也氏。島田雅彦や石田衣良と仲が悪いとかなんとか(^^;)。 作品も知らないのに、一挙に中原氏への興味がわく。 その彼を迎えたトークショーが冒頭にあり、大いに笑わせてもらった。 続いて、公募新人賞の傾向と対策というのが、これまた興味深い。 審査の内情もよくわかるし、無茶苦茶な作品が受賞していたりして、ここを読むと、思わず、自分も何か書けば受賞できちゃうんじゃないかって誤解する人が出てきそう。 あとは、ツモ爺ネタとか各賞の小ネタが満載。選評斬りは、特に好き。 |
文学賞メッタ斬り!リターンズ
2008 / 07 / 13 ( Sun )
芥川賞・直木賞予想については、ウェブで読んでいたけど、ほかの賞はノーチェックだったので、楽しく読んだ。 島田雅彦を迎えたトークも、一行ごとに突っ込みどころ満載で、笑えた。島田雅彦の文学賞に対する考え方も非常に参考になった。 日頃、意味のわからない選評を読んで、自分に読解力がないのだと思っていたが、そうでもないらしく、メッタ斬りコンビにとっても、意味不明なんだと思ってほっとしたり。 選評自体に芸風があったり、無茶苦茶だったりするのね。 選考委員の確執や嫉妬って、やはりあるんだなあ。文壇って、現代で一番閉鎖的なのかも。 そこに風穴を少しでも開けられるなら、この本の価値はあると思う。 あとは、全くアンテナをはってない作品に出会えるのも、この本のメリット。 ほめてあろうが、けなされてようが、読んでみたくなる作品が、ちらほら出てくる。初耳の作家をwikipediaで調べたりして、読書の幅が広がる。 |
走れ!T校バスケット部
2008 / 07 / 09 ( Wed )
都立高校のバスケット部を舞台にしたマンガのような、ドラマのノベライズのような、ジュブナイルのようなお話。 すぐに読めちゃいます。 「スラムダンク」や「DEAR BOYS」を思い出しながら、読んだせいか、印象が薄い。 主人公・陽一がイジメを受けた件で、立ち向かっていく父親の姿が頼もしく、爽快であった。 |
熱風
2008 / 07 / 02 ( Wed )
第48回講談社児童文学新人賞佳作。 熱くて、さわやかなテニスもの。 児童文学は、守備範囲じゃないけれど、いい作品が出てるなあと思った。 寝る前に読み始めたら、興奮して眠れず、最後まで読んでしまった。 テニスに熱中する中学生の話なのだが、冒頭のシーンは、「テニスの王子様」を思い出させる。 ただ、中身は全く違う。 主人公・孝司は、聴覚障害を持っているのだ。 そして、屈折した日々の中で出会った少年・中山もまた、頭髪が抜けるという病気を持っていた。 反発しあいながら、筆談を交わし、近づいていく二人。 二人に無理矢理、ダブルスを組ませるテニスクラブのコーチやクラブのおじさんのキャラクターもいい。 孝司が通うろう学校の様子も描かれていて、考えさせられる。 とにかく、テニスシーンが臨場感があって、たまらない。 二人がどのように動いて、どこにボールがあって、相手がどう出てくるか・・・手に取るようにわかるのだ。 ストーリーにひねりはないけど、著者のストレートな思いに胸が熱くなる。 |
八日目の蝉
2008 / 06 / 22 ( Sun )
本屋大賞にノミネートされていたので、読んでみる。 各所のレビューを読んで、もっと面白い話だと思っていたので、少々、肩透かし。 帯にあるようなサスペンスじゃないし。 確かに、一気に読める。だが、読後、気持ち悪くなってしまった。 合わなかったのかもしれない。 感動したとか心を揺さぶられたとか書いている人がほとんどなのに…。 第一章は、主人公が、過去に堕胎させられた不倫相手の家から赤ちゃんを誘拐して逃げまくる話。 第二章は、誘拐された子どもが成長してからの話。 リアルさも、私には感じられなくて、どこか、絵空事みたいなのだ。 赤ちゃんを連れて逃げ込む場所にしても、つかまらないような設定にするためにとってつけたような気がするし、第二章に書かれた事件の全容にいたっては、週刊誌の女の事件簿にしか思えなくて。 子どもの両親の描写も、誘拐犯を正当化するために、ひどく描いたような気がしてくる。 ただ、誘拐した子どもに主人公が注ぐ愛情は、本物に思えた。 |
ヘルマフロディテの体温
2008 / 05 / 27 ( Tue )
本屋でぱっと目を引く表紙。聞いたことのない作者だ。 プロフィールを見ると、 翻訳業を経て、イタリア語で小説を発表。本書『ヘルマフロディテの体温』で、2007年に第一回ランダムハウス講談社新人賞優秀賞に輝く。 富士見書房より同じくナポリを舞台にした『最後のプルチネッラ』を同時刊行。 とある。 妙に気になってしまい、読み始めたが…。 舞台はナポリ。 真性半陰陽(ヘルマフロディテ)の大学教授、年老いた女装街娼、去勢された男性歌手など、謎めいていて官能的なお話が始まるが、余りハマれなかった。 テーマの割りに、あっさりしていて、全く官能的なものを感じることができなかった。 薄いギリシャ神話みたいな感触。 もう1作も読むつもりだけど、果たしてどうかな? |













