キリサキ
2005 / 06 / 29 ( Wed )
「平井骸惚此中ニ有リ」で、注目している田代裕彦。「平井骸惚〜」とは全く違うテイストのお話。 死後の世界で、「案内人」に、別人の体に入り込めば、元の世界に戻れることを教えられ、元の世界に戻った主人公。自分の体に戻るためには、自分を殺さねばならない。一方、「キリサキ」と呼ばれる連続殺人犯が現れて・・・。 別人の体(異性)に入ったギャップなどは、面白いし、すべて読み終えたあと、騙されたことに気づくあたりは、よくできていると思う。が、設定が少し懲りすぎのような気がする。メフィスト系の某ミステリ作品を思い出した。 |
NO.6(ナンバーシックス)#3
2005 / 06 / 28 ( Tue )
やっぱり、紫苑は、いい。今回は、イヌカシとの交流が描かれる。イヌカシとネズミ。牽制しあいながらも、紫苑をめぐって・・・みたいな(^^;)。 ストーリーも面白いし、セリフも心に響くいい話なんだけど、うーん、何となく、男同士のからみを感じてしまう。 後悔しないと言い切る紫苑が、まぶしい。紫苑の成長とともに、ネズミの心の変化がうかがわれる。 ますます、謎めいてきて、早くアクションシーンが読みたい。夏ごろ続刊が出るらしいので楽しみに待っている。 |
扉は閉ざされたまま
2005 / 06 / 25 ( Sat )
タイトル通り、物語の中、ずっと扉は閉ざされたままである。 大学の同窓会が成城の高級ペンションで開かれ、7人の仲間が集まった。伏見は、客室で新山を殺し、密室状態を作り上げた。完璧と思われた密室工作だが、参加者のひとり、優佳が疑問を抱く。犯人と探偵役の、息詰まる戦い。 最初に感じたのは、山奥でも孤島でもなく、どうして、成城なんだよ〜というどうでもいいことだった。 評判通り、面白く、読み始めたら、とまらなくて、夜更かしをした。派手ではないが、緻密で説得力のある論理展開に舌を巻く。 読ませるという点では、及第点だし、動機も、許容範囲だとしても、満足度が低いのは、たぶん、伏見と優佳のキャラクターが、理解できなかったからだと思う。 |
いつかパラソルの下で
2005 / 06 / 20 ( Mon )
児童書でなく、森絵都が描く大人の世界。家族小説。 柏原野々は、厳格な父の教育に嫌気がさし、家を飛び出して5年。同棲相手を変えながら、フリーターをしながら、過ごしている。その父が事故死したあと、父の秘密を知ってしまう野々、兄、妹の3人。 兄(春日)と妹(花)とのやりとりが面白い。兄弟姉妹のいない私には、とても新鮮で楽しかった。 死後に出てくる家族の問題。父が亡くなったあとに、実は・・・という話はありがちだが、その謎のもっていきかたが、工夫されている。野々と、恋人達郎の微妙な関係もからみあって、読んでいる者を巻き込んで、「暗い血」をもつという父親のルーツ探しが展開する。 厳格な父親を言い訳にしてきた登場人物たちと自分も似ているところがあって、苦笑い。重いテーマをはらみながらも、どこかしらユーモラスでさわやか。 心に残った文章を引用しておく。 「誰の娘であろうと、どんな血を引こうと、濡れようが濡れまいが、イカが好きでも嫌いでも、人は等しく孤独で、人生は泥沼だ。 愛しても愛しても愛されなかったり、受けいれても受けいれても受けいれられなかったり。それが生きるということで、命ある限り、誰もそこから逃れることはできない___。」 |
反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークV
2005 / 06 / 17 ( Fri )
このシリーズも、もう5作目。最初のころに感じた違和感がなくなり、ずいぶん読みやすくなった分、印象も薄くなったかも。 「スカウトマンズ・ブルース」 悪質なスカウト事務所・リバティラインは、某W大のとんでもないサークルを思い出させる。きれいな女の子はみんな池袋に集まってくるというセリフがある。ほんとだろうか(笑)。 「伝説の星」 可もなく不可もなく。 「死に至る玩具」 日本で大人気の人形が、アジアの労働者を殺しているという重いテーマの話。その割りに、こんな簡単に解決しちゃっていいの?という気もして、すっきりしない。 「反自殺クラブ」 表題作だけあって、一番面白かったかな。とても苦しくて哀しい話だけど。 自殺サイトのオフ会って、ほんとにこんなのかな?想像できない。途中から先の展開が読めてしまうので、ミステリ的にはつまらないけど、親に自殺された子供たちの気持ちは、伝わってきた。 ラストで、マコトが得た真実が、陳腐だけど、その通りだと思う。私も、どんなくだらない理由でも、生きていこう、生きていたっていいじゃないかと思った。だけど、自分はそれでいいとしても、死に急ぐ人をどんなふうに助けることができるのか、わからない。 |
格闘する者に○
2005 / 06 / 15 ( Wed )
三浦しをんのデビュー作。新潮文庫で出ているが、私はこのハードカバーの表紙が好き。 就職活動の話だと聞いていたので、そのつもりで読み始めたが、思ったより、家族の話の比重が高かった。どちらも、面白かったけど。面接官とのやりとりなんて、とってもリアルで、はるか昔の自分の就職活動の時のことを思い出して、涙が出てきちゃったよ。とほほ。 面接で好きな作家をあげているが、中井英夫のことじゃないかな? 漫画雑誌の編集者を目指して出版社を受けるヒロイン。ふらふらしながらも、好きな仕事をしたいと思い続けるヒロインが、無性にうらやましく思えた。かつて、就職活動をしたことのある人、読んでみて。 |
インディゴの夜
2005 / 06 / 13 ( Mon )
渋谷のホストクラブを舞台にした連作短編集。表題作「インディゴの夜」は、第10回創元推理短編賞を受賞とのこと。 ミステリにはなっているけど、娯楽小説として楽しんだ。読み始めると、すぐに、石田衣良の『池袋ウエストゲートパーク』を思い出すが、こちらのほうが、読みやすく軽快な感じがする。その分、少々、浅い気も。 私がこの作品を楽しめたのは、たぶん、ホストラクブを知らないからじゃないかな。以前、ホストクラブの話題を友達がした時、全然興味がもてなくて、友達を白けさせてしまったことがある。だって、テレビに出てくるホストの人って、みんな私の趣味じゃないんだもん(^^;)。しかし、この本を読むと、俄然、ホストクラブに行きたくなるんだよね(笑)。これは、幻のお話、こんなホストクラブ、あるわけがないとわかっていても、もしかして・・・こんなに、いい人たちがいるの?なんてね。 編集者であり、ホストクラブのオーナーでもある主人公・晶のキャラクターは、ちょっと自虐的で好きだけど、誰でもかれでも、この人にすぐになつくところは、説得力がない。特に、2作目の「原色の娘」は、メルヘンちっく過ぎて、冷めてしまった。 でも、続編が出たら、きっと読むと思う。 ついでに、クドカンの脚本で、ドラマ化してくれないかな〜。 で、長瀬智也か岡田准一みたいな顔でミステリの話ができるホストがいるクラブがあったら、行ってもいいかもー(爆)。なんて、妄想が膨らむ一冊である。 |
裁かれる花園
2005 / 06 / 10 ( Fri )
心理学者のミス・ピムは、女子体育大学で講演をおこなうことになった。講演後は、すぐに帰る予定だったが、生徒たちのひきとめもあり、しばらく、大学で過ごすことになった。のどかな日々が永遠に続くかと思われたが、ある事件が起きる。そして、ミス・ピムがたどり着いた推理は・・・。 女子体育大学を舞台にしており、当時の花園の様子が描かれているのだが、ふと気づくと、現代の花園のお話を読んでいるような錯覚に陥る。訳が、現代風なので、余計にそう感じたのかもしれない。 著者自身の体育大学での経験が生かされ、コミカルでシニカルな学園描写になっていて、これが、この作品の最大の魅力と思われる。孤独なミス・ピムの人間観察の様子や個性的な教師や生徒たちの様子が、生き生きと描かれている。 だが、事件がちっとも起こらない。このまま、終わってしまいそうな気がしたころ、平和な日常に小さなさざなみが起き、また別の問題が浮上し、ページもかなり進んだところで、大事件が起きる。あと残りわずかなページで解決できるの?と不安がよぎる。 ラストは、驚きよりも、これでよかったの?という思いが強く、悶々としてしまった。 |
緑は危険
2005 / 06 / 09 ( Thu )
学生時代に読んだきりで、犯人とトリック、動機は覚えていたが、このたび、映画『青の恐怖』を見るにあたり、再読した。 初めて読んだときは、トリックには感嘆したが、そのほかの部分には余り興味がわかなかったことを覚えている。 なので、ブランドの作品としては高い位置になかったが、再読してみて、非常に完成された面白い作品であることに気づいた。 登場人物たちの人間関係が、以前は、うざったく感じたものだが、改めて読むと、会話の一つ一つが面白い。恋愛模様からも目が離せない。 当時の軍病院の様子も丁寧に描かれていて、その点でも評価できる。 また、誰が犯人かわからないもどかしさ、サスペンス性にもあふれており、犯人を知りながら読んでも、十分楽しめた。 ただし、読みやすい作品とは言いがたいので、時間のあるときに、じっくり味わってほしい。 |
ルパンの消息
2005 / 06 / 02 ( Thu )
横山秀夫が、15年前に書いた処女作で、今はなきサントリーミステリー大賞の佳作に入ったものの、刊行されなかった幻の作品。いつかは、読めるだろうと思っていたが、なかなか出版されないので、もしかして、駄作なのかなあと勝手に思い込んでいた。このたび、改稿され、ノベルズとして陽の目を見たことはファンとして喜ばしい。 物語は、平成2年警視庁にもたらされたタレコミ情報から始まる。15年前に自殺として処理された女性教師の死は、実は3人の男子高校生による殺人だったというもの。時効まで24時間。女性教師の死と、3人の男子高校生が決行したテスト問題の盗難計画『ルパン作戦』は、どのようにかかわっているのか?必死の捜査の行方は・・・。 著者を知らずに読んだら、横山秀夫とは、気づかなかったかも。現在の研ぎ澄まされた簡潔な文章とは似ても似つかぬ冗長さ。昭和という時代背景もあるが、ツッパリ高校生の描き方が、思わず笑ってしまうほどステレオタイプ。ただ、それがかえってレトロな雰囲気を醸し出し、過ぎ去った時代への郷愁を感じさせる。 事件そのものは、さまざまな人物がからみあい、面白かったので、一気に読み終えた。動機にまつわる部分で何となく腑に落ちないこともあるが、処女作としては、かなりの完成度だと思う。 「三億円事件」を取り入れた点や、刑事の描写、取調べを受ける人物の心の動き、そして読後のやるせなさなどに横山秀夫らしさを垣間見ることができる。 ちなみに、このときの大賞受賞作も、読者賞受賞作も現在新刊では入手困難である。コンスタントに作品を世に出すことの難しさを感じた。 |
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