ニッポン泥棒
2006 / 03 / 25 ( Sat )
驚愕のコンピュータソフト「ヒミコ」。その封印を解く鍵となる人物は、二人。熟年離婚された主人公は、ある日突然訪ねてきた男性に自分が、鍵の一人だと告げられる。もう一つの鍵となる人物を探し始めたとき、殺人事件が起きる。ソフトの争奪戦に巻き込まれた人々の運命はいかに? ネット社会の特殊性や危険性をうまく描いているが、ネットを知らない人には、わかりづらいかもしれない。「ヒミコ」の設定が非常に凝っていて面白く、テンポも速く、サスペンスとしては優れているが、登場人物の描き方が弱い気もした。ラストも、もう少し余韻が欲しかった。 |
街の灯
2006 / 03 / 21 ( Tue )
出版されてすぐに買ったはずなので、3年以上積んでいたことになる。いくら、北村さんが寡作だからと言っても、読むのが遅すぎだ。 『リセット』よりも少し前の時代のお話。語り手は、上流家庭の令嬢・花村英子。家にやってきた若い女性運転手を『虚栄の市』のヒロインにちなんで、ベッキーさんと呼ぶ。そして、起こる不思議な事件・・・。 「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」の3編を収録。新しいシリーズのようだ。 レトロな少女小説、お嬢様小説という感じだが、『リセット』よりも、こちらのほうが、好きだ。上流階級の生活と、古きよき銀座や軽井沢の風情と北村薫らしいミステリが、ほどよくミックスされていて、読んでいてこの上なく気持ちいいのだ。 サッカレーの著作やチャップリンの映画が出てくるのも、うれしい。NHKで映像化するのにぴったりの題材という気がするのだが、いかがだろうか。 |
砂漠
2006 / 03 / 18 ( Sat )
これは、面白いと噂を聞きつけて、読んでみた。ありそうな、なさそうな大学生活in仙台。帯には、「パワーみなぎる、誰も知らない青春小説!」とあるが、どちらかと言うと、淡々と読み終えてしまった。超能力とか事件は出てくるけれど。 5人の男女大学生の織りなすキャンパスライフが、どこかマンガの世界のような・・・。強烈な印象を残す西嶋のしゃべり方が、どこかで聞いた記憶がある。気になって、一晩考えたら、「のだめ」(『のだめカンタービレ』のヒロイン)を思い出した。どこが似ているんだ?と言われそうだが、「〜ですよ。くださいよ。」という語尾がのだめ調かと。すみません、こんなこと思うの、私だけだわ。 あっさりと読み終わった割りに、余韻を残す小説だった。 |
あの日にドライブ
2006 / 03 / 15 ( Wed )
エリート銀行員だった牧村は、上司にたてつき、会社を辞めた。今は、タクシー運転手をしている。営業ノルマは達成できず、不規則な生活のため、妻や子供たちとの会話もなくなってきた。 ある日、学生時代に住んでいたアパートの近くで客をおろしたことから、あの時、違う選択をしていたら、どうなっていたのか?と妄想にふける。 うまいなあ。さりげなくリアル。元気のないときに読むと、落ち込むかもしれない。特に、今の人生をやり直したいと思っている人は。 銀行内部の嫌さもたっぷりと描かれていて、痛みを感じる。就職や結婚など人生の岐路において、誰もが、あのとき、こうしていたら?と思う、普遍的なテーマを、重すぎず軽すぎず、扱っている。 牧村が、同期会への出席を躊躇するところやかつての夢のある場所にタクシーを走らせてしまうところに、共感を覚えた。 |
下流社会
2006 / 03 / 05 ( Sun )
「かまやつ女」の命名者が書いたということで、読んでみた。 まず最初に、下流度チェックというのがある。12項目中、半分以上当てはまったら、「下流的」だそうで。もちろん、当てはまることが多くて、笑ってしまった。 目のつけどころは、面白いし、今の日本社会をうまく表現している部分もあるが、わかりにくいデータが出てきたあたりから、読むのがしんどくなった。女性を、お嫁系、ギャル系、ミリオネーゼ系など類型化していて、ネタとしては非常に面白いのだが、カテゴリーが大雑把過ぎるのが気になった。 内容を鵜呑みにするのではなくて、今の社会への警鐘ととらえ、議論のきっかけにするのには、いい本だと思う。 |
姿三四郎と富田常雄
2006 / 03 / 02 ( Thu )
待ちに待ったよしだまさしさんのデビュー作。読み始めてからの第一印象は、「大丈夫日記」(よしださんのサイトの日記)の文学的バージョンという感じ。 私は、よしださんの予想を裏切り、「姿三四郎」」も読んでいたし、直木賞受賞作品「刺青」「面」のほかに、「夢と知りせば」も読んでいるが、富田常雄自身のことは全く知らなかった。富田常雄を調べて何が面白いんだろう?と不思議に思っていたが、この本を読むと、よしださんの楽しさが臨場感をもって伝わってくる。調べるたびに、出てくる謎。富田常雄が少女小説を書いていただって? 調べることは大変なことだが、苦痛ではない、こんなにも楽しいことなのだ。自分で発見したときの喜びは何ものにも変えがたい。そんな気持ちになってくる。 ちらっとテニプリに言及してあるところや、富田常雄の本が絶版であることを知り、古本者の魂が燃えるところなど、ユーモアもたっぷりで、思わず笑いがもれる。 よしださんの努力の上に、人脈の広さ、深さもプラスされて、富田常雄の本が続々と集まってくる様子が、実に気持ちいい。 読み終えて、本の雑誌社の方が、この本を出したいと思った気持ちがよくわかった。 いつかサインをいただく日を心待ちにして、本は、本棚の奥にしまっておこう。 |
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