阪急電車
2008 / 03 / 19 ( Wed )
阪急電鉄を舞台にした16編の連作短編集。地元の人や関西出身の人が読むと、ひときわ楽しめるらしいが、全く路線のことを知らない私でも、短い物語の中の凝縮された人生模様を、笑いながら、涙ぐみながら、怒りながら、頷きながら、堪能した。 あまりにも、ありふれていて、ベタすぎる展開で、ローカル線を舞台にしたこと以外の新鮮味がないにもかかわらず、ここまで面白いのは、著者のすごさだと思う。 どちらかと言えば、前半のほうが好きだ。 討ち入りの翔子、翔子に声をかける老婦人、キレる彼氏を持つミサなど、印象的な女性たちに比べると、男性陣は、少し弱い。 ミサが、電車の席取りをする話は、しばらく前に、実家近くの路線で同じようなことがあって、非常にリアルだった。少し違うが、隣の駅から乗ってくる仲間のために鞄で席を取っていた女子高生が、おじいさんに「あんたら、根性悪いな。」って言われていたのだ。おじいさんは、別の席に座れたが、文句を言っていた。でも、自分の隣に座っていたよその子どもには、「おじさん、大声出してごめんな。」って謝っていたのだ。 物語では、席取りをしたミサは、反省していたけど、私が見た女子高生は、将来、どんな子になるんだろうか。 また、恥ずかしいおばさんたちに、自分が将来ならないようにしないとね。 ただ、おばさんたちをやりこめたい気持ちは、わかるのだが、あのくだりは、カタルシスを感じなかった。 人を注意するのは、本当に難しい。あれが、おばさんたちでなく、男子高校生だったとしても注意できるのだろうか。・・・なんて思ったり。 軽く読ませながら、深く考えさせてくれる作品だった。 |
まんまこと
2008 / 03 / 17 ( Mon )
第137回直木賞候補作。 この著者の作品を読むのは、2作目だ。1作目の『百万の手』が、あまり好きでなかったので、それ以来、手を出さなかった。 「しゃばけ」シリーズというのが、面白くて人気があって、ドラマにもなったことは知っていた。 こちらは、そのシリーズとは別の新しいシリーズらしい。 直木賞候補になったということで、手にとった次第。 江戸は神田の古名主に持ち込まれる騒動を、やや頼りない跡とり息子・麻之助とふたりの悪友(男前でモテモテの清十郎、堅物の吉五郎)が活躍し、絵解きするという連作短編集。 時代物ミステリと江戸人情話をミックスしたイメージかな。 収録作は、「まんまこと」 「柿の実を半分」「万年、青いやつ」「吾が子か、他の子か、誰の子か」「こけ未練」「静心なく」の6話。 最初は、主人公の麻之助のノーテンキぶりが気に入らなかったが、だんだん、その理由と過去の出来事が浮かび上がってきて、麻之助の心情を思うと、胸が苦しくなる。 さりげなく登場している女性たちも、好印象。 全体的にインパクトは薄いが、読んでよかったなあとしんみりと思える一冊。 さわやかさと切なさが、藤沢周平の「蝉しぐれ」を思わせる。 「静心なく」のラストシーンには、涙さえ浮かんできた。おすすめ。 |
ソロモンの犬
2008 / 03 / 14 ( Fri )
秋内たちクラスメイト4人は、大学で教わっている椎崎鏡子助教授のひとり息子・陽介がトラックに撥ねられる瞬間に偶然、居あわせる。哀しみの中、議論を重ねる彼らに衝撃の結末が……。 ミステリというより、青春ものに近いと聞いていたのですが、意外とミステリしてました。 著者の得意とする伏線オンパレードに、こちらの推理も暴走し、あれやこれや妄想がふくらみますが、真相は、予想外のところにありました。 犬の使い方とか、唸りましたね。 読後感は、今までの著作の中で一番よかったかもしれません。悲しい割りにさわやかで、くすぐったい感じ。 大学生に戻りたくなりました。 秋内の人気が高いようですが、私は、京也に興味を持ちました。 |
映画篇
2008 / 03 / 11 ( Tue )
久しぶりに、金城一紀を読んだ。『対話篇』から何年たっただろうか。 映画にまつわる5編の短編を収録。それぞれの話が少しずつリンクしている。 収録作は、「太陽がいっぱい」「ドラゴン、怒りの鉄拳」「恋のためらい」「ペイルライダー」「愛の泉」。 そして、全編に登場するある映画。これは、私も大好きな映画だ。 これらの映画を見ていなくても、楽しめるが、見ている人、映画好きな人は、もっと楽しめるんじゃないかと思う。 ほかにも、たくさんの映画が登場し(通算で96本とか)、著者の映画への愛をひしひしと感じる。 特に好きなのは、「太陽がいっぱい」と「愛の泉」。 ただ、正直、巷の絶賛ほど、感動できなかった。著者の作風、変わったのかなあ? (2008年本屋大賞にノミネートされています。) |
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