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背表紙は歌う



出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズ第二弾。 「ミステリーズ!」に連載されていたもの。

これ、ファンの間では、ひつじくんシリーズと呼ばれているのね。
ひつじくんは、他社の営業がつけた井辻のあだ名で、井辻は呼ばれるたびに「井辻です」といちいち訂正を入れる。
ファンの多くは、この著作を楽しみながらも、最後は、成風堂シリーズの続編を期待しているんだなあ。

でも、私は、どちらも好きだけど、どちらかを選べといわれたらこちらのシリーズを選ぶ。作品としての完成度が高いと思うから。

さて、今回は、「ビターな挑戦者」というかっこいいタイトルの短編から始まる。
しかし、いきなり、パンチをくらった気分になる。
楽しみにしていた著作の冒頭には、ビター過ぎるというか、かなりシビアな話である。
もちろん、大崎さんの筆は、どこまでもあたたかくどこまでも希望を失わずにいるが、本を愛する者にとっては、目を背けたくなる現実の問題を取り上げている。
私も本屋が好きといいながら、便利さやきれいさを求めて、ネットでの本購入が8割を占めている。
業界人でもないのに、初っ端から、ちょっとどよ~んとしてしまった。
続く「新刊ナイト」は、提示される謎が、非常に面白い。
井辻の右往左往ぶりと緊張感がほどよく、ラストまで一気に読ませる。
どの作品にも共通するが、結末をはっきりと書いていない。
そこに物足りなさを感じる向きもあるようだが、断定的に描き切らないことで、読者の想像力をかきたてるので、その余韻を楽しむほうを私はすすめる。

表題作の「背表紙は歌う」。これは、タイトルがいいね。
地方の小さな書店の経営危機の噂を妙に気にする営業仲間の女性に相談された井辻。
井辻が、地方出張中の真柴(他社の営業)と連絡をとりながら、真相に迫っていくところが、ちょっと安楽椅子探偵っぽい。
こんなことあるのかなと疑問に思う箇所が、話を進めていくとちゃんと解決されていてすっきりする上に、大崎さんお得意の胸がきゅーっとなる描写があって、心憎いばかりだ。
ラスト1ページ、できすぎだろっ!

「君とぼくの待機会」
題材がたまらん。待機会という言葉も、ゾクゾクする。
直木賞を思わせる文学賞の話なので、日ごろ素人読者代表として(笑)、賞レースにブイブイ言っている私が楽しめないわけない。
つーか、どこか突っ込みどころはないかと虎視眈々と狙いつつ読む。
受賞作品が、受賞の翌日に書店にあるのは当たり前と思っていて、地元の書店にないと知ったときに怒り狂った昔が懐かしい。
今回のお話は、文学賞候補の作品がノミネートされたところで、某作品の受賞が決まっているという噂が流れて・・・というお話。
これ、超面白い。
賞周辺のもろもろが描かれているし、賞が決まる前に、井辻は真相を突き止められるのか、こちらまで手に汗がにじんでくる。
そして、着地点も・・・見事決まった!
この作品、何かのアンソロジーにも入れてもいいんじゃないかな。

「プロモーションクイズ」
これだけ書き下ろし。
書店員が、発売前の本のゲラを読めるというのは、かなり前から知っていたけど、大変な仕事ということを知ったのは、そう遠くない過去だ。
それまでは、うらやましいようなねたましいような気がしていた。自慢みたいに感じてね。
でも、先に作品が読めてうれしいなんて、甘いものじゃないんだよね。たくさんゲラが来ると、本当に大変そう。
ファンにはうれしいコラボもあって、楽しい一編。

テーマ:オススメの本 - ジャンル:本・雑誌

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Author:じゅび
ミステリが好き。
でも、面白いものなら何でも読みます。
スパムがひどいので、コメント、TBは承認制としました。

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