ウィンブルドン
2005 / 07 / 25 ( Mon )
こんなに面白いテニス・サスペンスがあったなんて! オーストラリア出身のキングとソ連出身のツァラプキンは、どちらも、若き天才プレイヤー。前半は二人の出会いと、友情をはぐくむ様子を微笑ましく思い、後半は、ウィンブルドン大会決勝で戦う二人の死闘とその陰で進行する卑劣な犯罪に、手に汗を握る。テニス好きなら、たまらない小説。いや、サスペンスとしても、秀逸。本当にテニスを愛する人が書いたのだと思われる迫真の描写。 試合結果も気になるけど、陰謀の行方も気になる。読み出したら、とまらない。でも、私は、あまりにドキドキしすぎて、途中で、本を閉じました(^^;)。 二人の天才プレイヤーのさわやかな友情が、時にくすぐったく、時にうらやましく、時にねたましく(笑)、青春小説としてもおすすめ。テニプリ好きな人も気に入るんじゃないかな、いろんな意味で。 現在、絶版なのが、残念だ。それと、この著者の作品は、ほかに翻訳されてないのだろうか。検索した限りではわからなかった。 |
美の秘密
2005 / 07 / 22 ( Fri )
グラント警部が、あるパーティで出会った美貌の青年リスリイ・シャール。彼は、村人の心をとらえ、やがて、婚約者のいる女性と親しくなったことで、不穏な雰囲気が漂う。やがて、リスリイが失踪し、グラント警部が捜査にあたることに。 えーと、これが復刊されたのが、いつだったかな? そのときに、すぐに購入して読み始めたものの、数ページで挫折。チャレンジしてもしても、読めない。美形の青年が出てくるお話なのにぃ。 それが、訳が古いせいなのか、事件が地味なせいなのかわからないが、ようやく、読み終えた。 最後に、『美の秘密』と訳した意味が、わかった。そういうことなのか。 根性入れて読めば、楽しめるが、このトリックは、微妙かも。 |
ラッフルズとバニー 二人で泥棒を
2005 / 07 / 03 ( Sun )
バカラ賭博で借金を背負ったバニーは、友人ラッフルズに助けを求める。そこから二人の泥棒紳士冒険譚が始まる。 大胆不敵なラッフルズと、良心の呵責を捨てきれないバニー。巻き込まれ型のバニーがちょっとかわいそうな気もするが、ラッフルズって、憎めないやつだなと思う。だからこそ、いいコンビなんだね。 ただ、冒頭の読書の栞に書かれているような、ボーイズ・ラブ小説との関係は、感じなかったけど(^^;)。 「ラッフルズ、最初の事件」が、一番好き。「皇帝への贈り物」は、しんみりとしてしまった。 |
裁かれる花園
2005 / 06 / 10 ( Fri )
心理学者のミス・ピムは、女子体育大学で講演をおこなうことになった。講演後は、すぐに帰る予定だったが、生徒たちのひきとめもあり、しばらく、大学で過ごすことになった。のどかな日々が永遠に続くかと思われたが、ある事件が起きる。そして、ミス・ピムがたどり着いた推理は・・・。 女子体育大学を舞台にしており、当時の花園の様子が描かれているのだが、ふと気づくと、現代の花園のお話を読んでいるような錯覚に陥る。訳が、現代風なので、余計にそう感じたのかもしれない。 著者自身の体育大学での経験が生かされ、コミカルでシニカルな学園描写になっていて、これが、この作品の最大の魅力と思われる。孤独なミス・ピムの人間観察の様子や個性的な教師や生徒たちの様子が、生き生きと描かれている。 だが、事件がちっとも起こらない。このまま、終わってしまいそうな気がしたころ、平和な日常に小さなさざなみが起き、また別の問題が浮上し、ページもかなり進んだところで、大事件が起きる。あと残りわずかなページで解決できるの?と不安がよぎる。 ラストは、驚きよりも、これでよかったの?という思いが強く、悶々としてしまった。 |
緑は危険
2005 / 06 / 09 ( Thu )
学生時代に読んだきりで、犯人とトリック、動機は覚えていたが、このたび、映画『青の恐怖』を見るにあたり、再読した。 初めて読んだときは、トリックには感嘆したが、そのほかの部分には余り興味がわかなかったことを覚えている。 なので、ブランドの作品としては高い位置になかったが、再読してみて、非常に完成された面白い作品であることに気づいた。 登場人物たちの人間関係が、以前は、うざったく感じたものだが、改めて読むと、会話の一つ一つが面白い。恋愛模様からも目が離せない。 当時の軍病院の様子も丁寧に描かれていて、その点でも評価できる。 また、誰が犯人かわからないもどかしさ、サスペンス性にもあふれており、犯人を知りながら読んでも、十分楽しめた。 ただし、読みやすい作品とは言いがたいので、時間のあるときに、じっくり味わってほしい。 |
死を呼ぶペルシュロン
2005 / 05 / 01 ( Sun )
精神科医マシューズのもとへ、真っ赤なハイビスカスを髪に挿した青年が現れる。小人に雇われているという青年の話を聞き、マシューズは、青年とともに、小人に会いに行く。そこで、青年は小人からペルシュロン(馬)を人気女優に届ける仕事を請け負うが、翌朝、女優の刺殺体が発見されて・・・。 この時代(1946年)に、こんな傑作が出ていたとは! 読み出したら、とまらない心理サスペンス。マシューズが巻き込まれた事件はまさに悪夢。読者は手に汗を握りながら、その悪夢を疑似体験することになる。 小人、馬、女優、鏡に映る顔・・・これらの小道具は、「ツイン・ピークス」を彷彿とさせ、私の頭の中では、鮮やかな色で、映像化されていた。最後の最後まで、息のつけない展開で、ラストシーンは、めまいを感じた。 |
最後の審判の巨匠
2005 / 04 / 22 ( Fri )
銃声に駆けつけた一堂がドアを押し破ると、俳優ビショーフが瀕死の状態で倒れていた。現場は密室状態。だが、技師ゾルグループは、自殺ではなくて殺人だと断言する。ビショーフの最期の言葉「最後の審判」とは何を意味するのか? タイトルと言い、装丁といい、ミステリ魂をそそる作品。この作品を一切の先入観なしに読めた私は幸せだ。過去に鮎川哲也や都筑道夫が言及した伝説的作品なので、知っている人にとっては、潜在的なものが働いてしまい、純粋に楽しめなかったのではないか。他人の感想を読んだりせず、まっさらな気持ちで読むのがベスト。 それにしても、1923年にこのような作品が書かれたことが驚きだ。読んでいる間はひたすら楽しいけど、読み終えた後に、誰かと語りたくなる異色ミステリ。しかも、解説が秀逸。 俄然、レオ・ペルッツに対する興味がわき、『九時から九時まで』(『密室』掲載)を読んだ。更に、評判のいい『第三の魔弾』(国書刊行会)も読んでみようと思う。 |
フランクフルトへの乗客
2005 / 03 / 23 ( Wed )
漫画「エマ」の著者、森薫が解説を書いているというので、買ってみる。クリスティー文庫って、文字が大きいのね。おまけに、本のサイズもほかの文庫より微妙に大きくて、手持ちのブックカバーがどれも合わないよー。 って、そんなことはどうでもよろし。久々のクリスティーである。やっぱり、クリスティーは、読みやすいわー。 この作品は、クリスティーの80歳で80作目の作品ということで本国では話題になったそうだ。 空港で出会った美女にパスポートとコートを貸してほしいと頼まれて、協力する外交官スタフォード・ナイが主人公。果たして彼女の正体は?彼を狙う不気味な影は?壮大なスケールのスパイ・スリラーって売りなんだけど・・・。 いやー、これ、何て言えばいいのか、とにかく読んでみて。面白いと言えば面白い(^^;)。頭の中で勝手に映像化して楽しんでしまったけど、余り深く考えずに読むことをおすすめする。 それから、文庫に挟まっているクリスティー文庫通信第12号は先に読んじゃダメよ。私はこれを先に読んでしまったので、少しだけ、楽しみが減ってしまったので。ネタバレってほどじゃないけどね。 森薫の解説は、最高なので、このためにだけ買っても損はないと思う。 |
プリーストリー氏の問題
2005 / 03 / 06 ( Sun )
A.B.コックスって、誰だろう?知らないけど、海外ミステリ好きな人たちが面白いと書いていたので、早速読んでみて、びっくり!無知をさらけ出してしまった。A.B.コックスって、アントニイ・バークリーの別名義だったのだ! バークリーが書いたのなら、ユーモア小説と言っても、きっとシニカルな笑いに違いないと思い、読み始める。 独身紳士のプリーストリー氏は、友人にばかにされるほど、活気のない人生を送っていた。ある日、街で見知らぬ美女に助けを求められ、彼女に協力するのだが、それが、とんでもない事態に。 登場人物のセリフが面白いので、このまま、舞台化してもかなり笑えるなとは思いつつも、実は、心から笑えたのは、ある人物の置き手紙が出てきたあたりからだ。プリーストリー氏の問題が第三者的には笑えても、どうしても、彼がかわいそうになってしまい、早くどうにかしてあげたい気持ちで一杯だった。 ロマンティックな部分は楽しめたが、それ以外は、一筋縄ではいかないバークリーをいやと言うほど感じさせられた。シンシアがいて、ほんとよかった。 ちなみに、友人のプリーストリー氏評は、「キャベツ野郎」とか「蕪野郎」なのだが、こういう言い方は、初めて聞いた。 ネット検索で読んだ感想では、ほとんどの人が最高に面白いと書いていた。 ああ、私だけが、こんな中途半端な楽しみ方しかできなかったんだ・・・。ちょっと凹む。 |
月が昇るとき
2005 / 02 / 26 ( Sat )
ロンドンの西に位置する運河の町で起きた切り裂き魔による連続殺人事件。語り手は、13歳の少年サイモン。弟のキースとともに、この事件の真相を探ろうとするが・・・。 物語のツボをあえて外していくオフビートな語り口が魅力と言われる著者の作品。それでも、この作品は、「ソルトマーシュの殺人」に比べると、普通に近いように思えた。 語り手が、少年だからだろうか。残酷な殺人事件なのに、なぜか、のどかで、ファンタジックな感じが全編を漂っているのだ。まるで、すべてが月の光に照らされたマジックのように。また、エキセントリックな探偵ミセス・ブラッドリーも、この兄弟の魅力の前には、印象が薄くなる。 ミステリ的な部分よりも、兄弟と下宿人クリスティーナとの関係が気になって気になって、ドキドキしてしまった。 解説を読むと、数多くの面白そうな作品が未訳なので、ぜひこれからも、どんどん翻訳されることを希望する。 |












