熱風
2008 / 07 / 02 ( Wed )
第48回講談社児童文学新人賞佳作。 熱くて、さわやかなテニスもの。 児童文学は、守備範囲じゃないけれど、いい作品が出てるなあと思った。 寝る前に読み始めたら、興奮して眠れず、最後まで読んでしまった。 テニスに熱中する中学生の話なのだが、冒頭のシーンは、「テニスの王子様」を思い出させる。 ただ、中身は全く違う。 主人公・孝司は、聴覚障害を持っているのだ。 そして、屈折した日々の中で出会った少年・中山もまた、頭髪が抜けるという病気を持っていた。 反発しあいながら、筆談を交わし、近づいていく二人。 二人に無理矢理、ダブルスを組ませるテニスクラブのコーチやクラブのおじさんのキャラクターもいい。 孝司が通うろう学校の様子も描かれていて、考えさせられる。 とにかく、テニスシーンが臨場感があって、たまらない。 二人がどのように動いて、どこにボールがあって、相手がどう出てくるか・・・手に取るようにわかるのだ。 ストーリーにひねりはないけど、著者のストレートな思いに胸が熱くなる。 |
八日目の蝉
2008 / 06 / 22 ( Sun )
本屋大賞にノミネートされていたので、読んでみる。 各所のレビューを読んで、もっと面白い話だと思っていたので、少々、肩透かし。 帯にあるようなサスペンスじゃないし。 確かに、一気に読める。だが、読後、気持ち悪くなってしまった。 合わなかったのかもしれない。 感動したとか心を揺さぶられたとか書いている人がほとんどなのに…。 第一章は、主人公が、過去に堕胎させられた不倫相手の家から赤ちゃんを誘拐して逃げまくる話。 第二章は、誘拐された子どもが成長してからの話。 リアルさも、私には感じられなくて、どこか、絵空事みたいなのだ。 赤ちゃんを連れて逃げ込む場所にしても、つかまらないような設定にするためにとってつけたような気がするし、第二章に書かれた事件の全容にいたっては、週刊誌の女の事件簿にしか思えなくて。 子どもの両親の描写も、誘拐犯を正当化するために、ひどく描いたような気がしてくる。 ただ、誘拐した子どもに主人公が注ぐ愛情は、本物に思えた。 |
ヘルマフロディテの体温
2008 / 05 / 27 ( Tue )
本屋でぱっと目を引く表紙。聞いたことのない作者だ。 プロフィールを見ると、 翻訳業を経て、イタリア語で小説を発表。本書『ヘルマフロディテの体温』で、2007年に第一回ランダムハウス講談社新人賞優秀賞に輝く。 富士見書房より同じくナポリを舞台にした『最後のプルチネッラ』を同時刊行。 とある。 妙に気になってしまい、読み始めたが…。 舞台はナポリ。 真性半陰陽(ヘルマフロディテ)の大学教授、年老いた女装街娼、去勢された男性歌手など、謎めいていて官能的なお話が始まるが、余りハマれなかった。 テーマの割りに、あっさりしていて、全く官能的なものを感じることができなかった。 薄いギリシャ神話みたいな感触。 もう1作も読むつもりだけど、果たしてどうかな? |
再婚生活
2008 / 05 / 03 ( Sat )
直木賞を受賞する以前から、山本文緒が好きで、よく読んでいました。 このところ、新刊が出ないなと思っていたら、うつ病になって大変な苦労をされていたんですね。 この本は、その生活を赤裸々に綴った日記です。 再婚したご主人(王子と呼ぶのが、違和感ありましたが、実際そう呼んでいるらしいです)に支えられながらも、つらい日々を過ごします。 読んでいて、いたたまれなくなります。 作家・山本文緒の日記ではなくて、普通の女性の日記です。そこが、かえって心に響いてくるのです。 仕事も順調で、マンションも買い、再婚もして恵まれすぎていると言われたこと、一生懸命元気を装うと、元気そうと言われ、複雑な思いになったこと、当日にならないと起きられるかどうかわからなくて、ドタキャンばかりで、とうとう約束もしなくなってしまったこと・・・。 一つ一つのエピソードが大事なメッセージを伝えています。 誰もがうつ病になる可能性があり、誰もが、うつ病の家族を支える可能性があることを再認識しました。 |
図書館革命
2008 / 04 / 15 ( Tue )
やめろ〜!いいかげんにしろ〜!と叫びたくなるくらい、すごかったです。 テンポよく進むストーリーの途中で、ふいに差し込まれるラブコメの一撃。 赤面、鳥肌モノですよ。 作者の脳内は、妄想乙女炸裂ですよ。 マンガなら普通なのに、文章で読むと、どうしてこんなにこっぱずかしいのでしょうか。 手をつなぐとかキスとかが、なんでこんなにもフレッシュなんでしょうか。 バカップルだけでなく、今回は、私の好きなあの人とあの人までが! 「担保」とか言っちゃってます。(読めばわかります。) でも、今回の郁は、よく頑張ったと思います。 人にパワーを与えるのは、使命感や正義感だけでなく、愛なのでしょうか。 個人的にはもっと柴崎と手塚と手塚兄の今後が知りたいです。 残念なのは、ラストのエピソード。蛇足というか、興ざめです。 シリーズ完結ということですが、こんなものが出てますね。
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阪急電車
2008 / 03 / 19 ( Wed )
阪急電鉄を舞台にした16編の連作短編集。地元の人や関西出身の人が読むと、ひときわ楽しめるらしいが、全く路線のことを知らない私でも、短い物語の中の凝縮された人生模様を、笑いながら、涙ぐみながら、怒りながら、頷きながら、堪能した。 あまりにも、ありふれていて、ベタすぎる展開で、ローカル線を舞台にしたこと以外の新鮮味がないにもかかわらず、ここまで面白いのは、著者のすごさだと思う。 どちらかと言えば、前半のほうが好きだ。 討ち入りの翔子、翔子に声をかける老婦人、キレる彼氏を持つミサなど、印象的な女性たちに比べると、男性陣は、少し弱い。 ミサが、電車の席取りをする話は、しばらく前に、実家近くの路線で同じようなことがあって、非常にリアルだった。少し違うが、隣の駅から乗ってくる仲間のために鞄で席を取っていた女子高生が、おじいさんに「あんたら、根性悪いな。」って言われていたのだ。おじいさんは、別の席に座れたが、文句を言っていた。でも、自分の隣に座っていたよその子どもには、「おじさん、大声出してごめんな。」って謝っていたのだ。 物語では、席取りをしたミサは、反省していたけど、私が見た女子高生は、将来、どんな子になるんだろうか。 また、恥ずかしいおばさんたちに、自分が将来ならないようにしないとね。 ただ、おばさんたちをやりこめたい気持ちは、わかるのだが、あのくだりは、カタルシスを感じなかった。 人を注意するのは、本当に難しい。あれが、おばさんたちでなく、男子高校生だったとしても注意できるのだろうか。・・・なんて思ったり。 軽く読ませながら、深く考えさせてくれる作品だった。 |
まんまこと
2008 / 03 / 17 ( Mon )
第137回直木賞候補作。 この著者の作品を読むのは、2作目だ。1作目の『百万の手』が、あまり好きでなかったので、それ以来、手を出さなかった。 「しゃばけ」シリーズというのが、面白くて人気があって、ドラマにもなったことは知っていた。 こちらは、そのシリーズとは別の新しいシリーズらしい。 直木賞候補になったということで、手にとった次第。 江戸は神田の古名主に持ち込まれる騒動を、やや頼りない跡とり息子・麻之助とふたりの悪友(男前でモテモテの清十郎、堅物の吉五郎)が活躍し、絵解きするという連作短編集。 時代物ミステリと江戸人情話をミックスしたイメージかな。 収録作は、「まんまこと」 「柿の実を半分」「万年、青いやつ」「吾が子か、他の子か、誰の子か」「こけ未練」「静心なく」の6話。 最初は、主人公の麻之助のノーテンキぶりが気に入らなかったが、だんだん、その理由と過去の出来事が浮かび上がってきて、麻之助の心情を思うと、胸が苦しくなる。 さりげなく登場している女性たちも、好印象。 全体的にインパクトは薄いが、読んでよかったなあとしんみりと思える一冊。 さわやかさと切なさが、藤沢周平の「蝉しぐれ」を思わせる。 「静心なく」のラストシーンには、涙さえ浮かんできた。おすすめ。 |
映画篇
2008 / 03 / 11 ( Tue )
久しぶりに、金城一紀を読んだ。『対話篇』から何年たっただろうか。 映画にまつわる5編の短編を収録。それぞれの話が少しずつリンクしている。 収録作は、「太陽がいっぱい」「ドラゴン、怒りの鉄拳」「恋のためらい」「ペイルライダー」「愛の泉」。 そして、全編に登場するある映画。これは、私も大好きな映画だ。 これらの映画を見ていなくても、楽しめるが、見ている人、映画好きな人は、もっと楽しめるんじゃないかと思う。 ほかにも、たくさんの映画が登場し(通算で96本とか)、著者の映画への愛をひしひしと感じる。 特に好きなのは、「太陽がいっぱい」と「愛の泉」。 ただ、正直、巷の絶賛ほど、感動できなかった。著者の作風、変わったのかなあ? (2008年本屋大賞にノミネートされています。) |
ベーコン
2008 / 02 / 29 ( Fri )
第138回直木賞候補作。 著者が児童書の翻訳家と知り、勝手にほのぼのとした人情話を想像していた。表紙もかわいらしいし。 ところが、読み出したら、全く違う。 ヨダレが出てきそうな、あるいは、自分で作りたくなるようなおいしい食事が出てくるのは大満足だが、それにまつわるストーリーは、心がざわめくものばかり。 食べるという行為と少々艶っぽい男女のからみとを、淡々と描いている。 表現はさらりとしているのに、心にじっとりとからみついてくる。 これほどまでに、心を揺さぶられるとは。 もしも、もっと若い頃に読んでいたら、この味は理解できなかったと思う。 今なら、主人公達の心に寄り添えるような気がする。 9つの短編は、どれもが、おいしさと胸苦しさと居心地の悪さと切なさをまとっている。 特に、『ほうとう』『アイリッシュ・シチュー』『ベーコン』に泣けた。 また、幾度も繰り返して読みたくなるような、はっとする文章に出会うときがあり、著者の言葉の使い方に非凡さを感じた。 気になって調べてみたら、井上光晴の娘だった。 |
ホルモー六景
2008 / 02 / 24 ( Sun )
面白い。面白すぎる、マキメ。 マキメ、マイラブである。 もう一度、『鴨川ホルモー』を読み返したくなった。 ただ、タイトルを変えたほうがよかったかもしれない。 これ、『鴨川ホルモー』を読んでいないと、面白さが半減しちゃうんだよね。 だから、『続・鴨川ホルモー』とか。いや、続編じゃなくて、サイドストーリーだから、『鴨川ホルモー外伝』か。 2冊セットで読めば、最強! 6編の恋の物語。 私が、マキメを好きな理由がわかった。この人の恋の描き方が好きなのだ。 古典的というか、懐古趣味というか、もどかしいというか。 随所に出てくる小道具もまた、心憎いんだよなー。手紙とかあの果物とか。 6編の中では、特に『ローマ風の休日』と『もっちゃん』が好き。 |
















